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今回は【部活】がテーマです。
学習指導要領によると部活は「教育課程外の学校教育活動」とあります。
これは、学校が行う教育活動なんだけど、
教育課程(時間割)には含まないもの、という位置づけです。
だから原則生徒の自由意思で参加するものであり、進級や卒業に影響する活動ではありません。
しかし現状は多くの高校生が部活動には加入しているし、
教員はほぼ全員がどこかの顧問として割り当てられます。
近年先生の働き過ぎが問題になるのは、
本来自主活動であるはずの部活動顧問を強制され、しかもその負担が膨大だからです。
実際土日の休みもほとんど取れない先生はたくさんいらっしゃいます。
だから個人的には、部活動には一定の制限を設けるべきで、
勝利至上主義や保護者・生徒の要望を聞くばかりの体制は絶対に変えていかねばならないと考えています。詳しくは別記事もご参照ください。
…が、一方でそんな”お荷物”扱いの部活動を廃止・縮小する流れはまだ多くありません。
つい最近、令和8年度から神戸市の公立中学校で部活動を終了し、地域のスポーツ団体等に移行する、という画期的なニュースがあったばかりですが、これが実現すればまた別の問題も生じそうな気もします。
ま、部活動が学校から完全に消えることは今後も含め、
”ない”
だろうと私個人は考えています。
それは何故か?
というと、
部活動には授業では得られない素晴らしい教育効果もあるから
であり、これを求める人が多いからなんですね。
今回はこの素晴らしい教育効果について、以下に述べます。
部活の「教育効果」とその「負担」や「代案」を天秤に掛け、
理想のあり方を模索するきっかけになれば…
と願います。
部活をがんばっている人にはもちろん、
部活を辞めたい人や加入していない人、
さらに中学生や保護者、先生にも読んでほしい内容です。
最後まで読んでいただけるとうれしいです。
部活動で得られる「絶大な効果」
スペシャリストを目指す経験
学校の本業である授業は「広く浅く」が基本です。
専門学科の専門科目を除き、文系・理系・その他の科目を広く履修します。
しかし部活は”専門職”的活動です。
陸上部は陸上に、吹奏楽部は吹奏楽に特化した活動に取り組みますが、
さらにその中でも細分化されており、
陸上部ならハードル専門とか、吹奏楽部ならホルン専門とかあって、
そこを徹底的に鍛える活動が部活動だといえます。
つまり部活は「狭く深く」が基本であり、
その分野に関しては”誰にも負けない”専門性”を追求する活動だといえます。
この専門性は、
社会に出てから活きてきます。
魚屋は魚のプロであり、電気屋は電気のプロです。
両方のプロである必要はなく、何か一つのジャンルでプロであることが、社会では求められます。
そんなプロへのステップやこだわりの基本(姿勢)を学ぶのが部活動だ、
と私自身は考えています。
自己の適性を知る
部活には運動部や文化部、個人競技や団体競技…など様々な形態があり、
どこに加入するか?は、自分の興味や適性と相談して決めるものです。
私自身は中学時代運動部(団体種目)でしたが、ずっと補欠でやりがいもなかったので、
高校では文化部(個人種目)に入りました。
結果的にはそっちの方が自分に合っていて、結局その道に進むことを決断しました。
これは初恋の人と結婚することが少ないのに似ています。
出会いと別れを繰り返しながら、理想の伴侶を求める人が多い現実に鑑み、
いま部活を辞めたいと悩む人も「その過程にいる」と考えれば、少しは気が楽になるかもしれませんね。
そんな自己の適性に係る決断は、
周囲の助言も得た上で、最終的には自分でしなければなりません。
ブログの別記事もご参照ください。
壁を乗り越える経験(人間力)
これは説明不要だと思いますが、
活動の理想と現実には大きなギャップがあり、
これを埋め、乗り越えるために厳しい練習に耐えてる、のが現実でしょう。
逃げるのは簡単だけど、それも悔しいから頑張っちゃうんですが、
その結果、自身の成長を感じたり、大会で結果が出た時に、
「壁を乗り越えた」
という実感を覚えます。
それ以外にも人間関係や学業との両立など壁はたくさんあるので、
そんな困難に向き合い、一つずつ乗り越えることで自信がつきます。
その自信が人間力となり、
今後少々の困難があっても、
壁を「乗り越える」経験をした人は、
これを土台に強く生きていける大人になれるのです。
競い合う経験
部活は”専門職”であり、その世界には自分より上がたくさんいます。
自分と同じレベルにもライバルがたくさんいて、その数はみなさんの想像以上に多いのが現状です。
いくら地区大会で上位でも、県大会に行くと歯が立たないこともあるし、
全国に行くとさらにスゴいのがゴロゴロいます。
だから全国で上位を目指すのは無理でも、
自分に合ったレベルで競い合う経験ができるのが部活のメリットでしょう。
甲子園に行くだけが野球部の目標ではありません。
前回がベスト32なら、次回はベスト16を目指して競い合えばいいのです。
競い合って勝つことができれば自信や実績になるし、
たとえ負けてもそれまでに頑張った経験が財産になります。
甲子園に行けなかったから、といって、野球部での活動を後悔することはないんですね。
だから後にも書きますが、
勝ちに拘り過ぎる部活は、勝負以上に大事な何かを失うような気もしています。
部活は、負けても大事なことが勉強できる場でありたいと思います。
負ける練習
上記にも関連しますが、
部活では勝つより「負ける」ことの方が圧倒的に多いんですね。
負けて凹むのは当然でも、
その後これをバネに捲土重来を期すことが求められ、
一度や二度の負けで、簡単に諦めてはいけません。
厳しい練習も、
負ける経験も、
逆境に立ち向かうあなたを強くするためのハードルであり、
これを乗り越えた経験は、必ずや将来にもぶつかる壁に立ち向かう勇気を与えてくれるはずです。
自己効力感と自己肯定感の涵養
よく似た言葉ですが、意味は少し違います。
自己効力感
「自分はできる」と思える感覚
自己肯定感
ありのままの自分を肯定する感覚
となり、競争社会の現代を生きる我々には必要不可欠の感覚です。
しかしこの感覚は勝手に身に付くものではありません。
若いうちは根拠ない自信があっても、これは長続きしません。
長くこの感覚を持ち続けるには、みなさんのような青年期に「やればできる」を実感する経験と、周囲から「承認」される経験をし、これを自分に植え付ける必要があるのです。
部活や勉強(受験)は、有意義に生きていくためのそんな感覚を身につける最適な活動だ、と思います。
礼儀や協調性、自主性、感謝の気持ちが身に付く
さらに部活動は顧問や保護者をはじめ、多くの人に支えられています。
みなさんは、大会運営に多くの人が関わっていることは、わかりますよね。
これが全国大会ともなると数年前から準備するし、
日頃の練習も、学校や保護者、チームメイトやOB・OGの支えがあるからこそ全力で取り組めるんですよ。
そんな現実を当たり前と思わず、感謝の気持ちを持ち、充実の活動をすることが恩返しだと思って取り組むことです。
そしてあなたが大人になった時、逆の立場で次代の青年を支える側に立ってください。
また部活動は「自主活動」ですから、指示待ちに終わらず、自主的に活動計画を考えたり、改善点を考える自主性も求められます。
さらに部活では、同学年の(横の)繋がりとともに、先輩や後輩との(縦の)繋がりもあります。
この縦の繋がりは社会に出れば普通なんですが、
学校生活で日常的に縦の繋がりを経験できるのは部活だけなんですね。
特に先輩が自主的に後輩の面倒を見る姿勢は絶対的に必要だと思います。
加えて挨拶や正しい敬語を使う…等、人として求められる礼儀やマナーを指導される場でもありますが、これらを学ぶ機会は、授業より部活動の方が圧倒的に多い、といえるでしょう。
最後に_勝負に固執し過ぎない運営と指導を
本稿の最後に、部活顧問の先生に向けた提言をひとつ。
それは、
「勝負に固執し過ぎてはいけない」
ということ。
勝ち負けは大事…でもそこに拘り過ぎて、
練習を休むとパフォーマンスが下がるから休日も活動するのは当然
(生徒は)勉強が苦手なんだから部活で実績を出さなければいけない
生徒に自信と実績をつけるために自分はがんばっている
自分は優秀な指導者であり、学校の発展に寄与している
部活指導に熱心じゃない教師は楽をしている
副顧問も指導や引率は当たり前
という考えに固執しないよう、お願いしたいです。
それは何故かというと、
部活はプロ養成所ではないこと
あなたは部活で生活していても、ほとんどの生徒の将来はそうじゃないこと
過度な練習で心身の故障を招きやすくなること
過度な練習では学業との両立が困難になること
すべての顧問がその道の専門家ではないし、家庭事情等も違うこと
本気でやりたければ、部活以外にも活動の機会(場)があること
…等がその理由です。
私自身も部活大好き先生でしたが、
昔は定期考査前でも調整練習的な活動をしていました。
今思うと、これは、
「1週間も練習しなかったらパフォーマンスが大きく下がる」
という自分勝手な強迫観念そのものでした。
しかしいくつかあったそんな部の在り方が問題になり、
考査前の活動が不可になった時に気付いたんですね。
「多くの生徒は何とも思ってなくて、自分一人勝手に縛られていた不安」
「むしろ生徒はテスト勉強ができる、と喜んでいる」
実際に1週間以上練習を無くしたら、自分自身がとても楽だったし、
再開後の練習がとても新鮮だったことを思い出します。
活動も「やらされてる感」じゃなく、
「やりたくて」やっている感じに変わりました。
これをきっかけに、
部活って自主活動なんだから、
「辞めたければいつ辞めてもいい」
「休みたければ休んでいい」
「練習は○時までだけど、いつ帰ってもいい」
「ただし連絡は入れること」
という運営方針に変えちゃいました(^^;
それでも辞めたり休んだり早退する子はほとんどなく、
生徒のパフォーマンスもそんなに低下しなかったので、
適度な休みや自主性は絶対に必要なんですね。
大会結果もそんなに変わりませんでしたし、、、
最後に、
部活の勝ち負けに拘り、生徒に強い影響力を持つ先生方へ
先生のご苦労や熱い思いはよくわかりますが、
部活顧問なんて所詮小さなお山の大将に過ぎません。
これは現場を離れた自分にはよくわかります。
しかし部活は勝負以上に得られるものもたくさんあって、
顧問はその手助けをするに過ぎない存在です。
どうか生徒をはじめ、そこに関わる多くの人の負担になり過ぎない運営と指導をお願いします。
そのための方法(考え方)はいくらでもあるはずです。
部活はあくまでも”自主活動”なのですから、、、
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