いつもご覧いただき、ありがとうございます。
今回は校内で散発する【盗難被害】について、
小生の著作より引用したものをご紹介します。
これは、
校内で盗難被害に遭ってしまうと、
その多くは「泣き寝入り」という現状と、
その一方で何もしてやれない私の無力感から
過去に執筆したものです。
盗難は、盗った者が悪いのは当然ですが、
一方でこれを管理する本人や学校にもその責任が問われる問題です。
そして被害者はただでさえショックなのに、
「君の管理も悪い」
なんて、傷口に塩を塗るような配慮ない対応が問題視されることもあり、
いくら正論でも指導にはかなりの慎重さが求められる場面でもあります。
以下、私の過去の著作より引用し加筆修正したものを掲載します。
安心した学校生活を送るために、
誰もが被害者にも加害者にもならないために、
校内の危機管理能力を高めるためにも、
ご一読いただければ幸いです。
盗難発生時の苦悩
学校に限らず我々の毎日に「危機管理能力」は必要不可欠です。
学校では、時に「盗難」の被害があります。
体育の授業中に何者かが更衣室に侵入し、財布から現金が抜かれる、といったようなケースです。
盗難が起きると一昔前は、被害者に「紛失届」を書かせ、もしそれが出てきたら本人に返す、という流れでしたが、現実盗られた品が出てくることはまずありませんし、犯人は足がつかないように、財布から現金だけを抜き取り、あるいはすぐにフリマサイトに出品し現金化することが多いものです。
空の財布が下駄箱の下から大量に出てきたことや、詰まったトイレから発見されたこともありました。
今は盗難が起きるとすぐに警察を呼び、時間が経っていなければ、鑑識が指紋を採取することもありますが、多くの人が入れ乱れる学校で、犯人を特定することは非常に困難です。
警察に通報しても解決はしないかも?と思いながらも警察を呼ぶのは、(犯人が関係者なら)それが抑止力になるのでは?という期待もあるからです。
もちろんそれだけで手を焼いているわけではありません。
盗難が発生したら、全クラスの出席簿をすべて点検し、授業中トイレや保健室に行った生徒、遅刻早退した生徒の様子を関係教員に確認し、来訪者や防犯カメラ映像のチェックも行います。
そしてこれを放課後までに終わらせなければ、犯人が生徒だった場合、確認のしようがなく時間勝負となるのです。
しかしここまでやっても犯人が見つかることは稀です。
…とはいえ、学校に「財布を持ってくるな」とも言えません。
特に体育などで貴重品を身につけられない場合は、教室等の施錠を徹底し、貴重品袋を用意して、そこに財布やスマホを預かるのが通常です。
しかし入学時はほぼ全員がこれを預け、パンパンになる貴重品袋も、しばらくすると多くは預けなくなります。
もちろん日常的に盗難が起こるわけではないので「自分は大丈夫だろう」という“平和ボケ”がこうさせるのです。
一方の教員も「預けなさい」とは言うものの、それ以上の強制をすることはなく「自己責任だぞ」と一言付け足して徹底管理をしません。
これは教員も“平和ボケ”しているのと、
「指導はした」という既成事実を作り、問題が生じた際の責任を回避する目的もあります。
そして生徒も、そんな教師の心情をよくわかっています。
しかし現実に盗難が起きてしまえば、被害者の落胆は大きく、
それとともにショックなのは「だから言ったじゃないか」と傷口に塩を塗るような教師の一言もあって、これが保護者や管理職をも巻き込む大問題に発展したこともありました。
これは「盗難が起こったのは学校の管理体制に落ち度がある」とか「教師の心ない一言に傷ついた」という怒りです。
こうなったら貴重品袋に預けなかった本人ばかりを責めるわけにもいかず、学校側はひたすらその管理体制を謝罪し「再発防止」を約束しなければなりません。
でも私は心の片隅で
「鍵をかけ忘れた留守宅に泥棒が入ったら、施錠しなかったあなたも非がある、とそれでも言われるだろ??」
と内心は思っていました…。
このように社会全体(学校も含む)には、自分で自分を守らなければならない「危機管理能力」が求められるのです。
学校は確かに安全で安心できる空間であるべきですが、これはこのような自己管理の下に保障されるもので、危機管理の責任は原則双方にある、という意識が必要なのは申すまでもありません。
私の経験した驚きの盗難事件

来客を装った学校荒らし
私の長い教員生活ではこんなことがありました。
体育の授業で空となった教室で盗難被害が起きたのです。
しかし教室は施錠されており、全クラスの出席簿を点検しても不審な生徒はいないという状況で、一応警察には被害届を出しましたが、
なんと2年後に犯人が捕まったのです。
犯人は近隣県も含めた50校ほどに余罪がある学校専門の窃盗犯でした。昼間の学校稼業中に堂々と来客を装い校内に侵入していたそうです。
主に狙われたのは、非常階段に近い校舎の端にある教室でした。
学校は「来訪者には挨拶を」と指導していますから、本当に堂々と入って来られたら、誰も泥棒だと疑わず「こんにちはー!」と挨拶するでしょう。
もしかすると、私も明るく挨拶していたのかも知れません…。泥棒は気持ちよく挨拶されてどんな気分だったのでしょうか??
学校は、24年前に起こった大阪教育大学付属池田小学校での事件をきっかけに、授業中原則校門を開放せず、防犯カメラも設置されるようになり、表向きはセキュリティが強化したようにも見えますが、恒常的に来客の多いところでもあり、実はとても不用心なところです。
高校でいえば、大学や専門学校等の入試担当者、教材販売会社、他校の先生、保護者、卒業生…もっと細かくいえば、印刷機のメンテナンスやら消防設備の点検やら、食堂や購買関係やら…、
とにかく知らない人がたくさん来校し、校内を普通に歩いています。
もちろん正規の来客は入校時、ちゃんと受付をして来客のネームプレートをしますが、これも“平和ボケ”なんでしょうね。
来客を装った泥棒が来るなんて想像すらしませんから、何の確認も疑いもなく、ただ明るく挨拶をするばかりです。
この犯人は、学校のこうした「甘さ」を逆手にとって犯行を繰り返していたのです。
さらに、施錠された教室にどうやって侵入したか?というと、
教室上の天窓が開いていて、そこをよじ登り、生徒の財布から現金だけを抜き取っていたそうです。
まさに「人を見たら泥棒と思え」の諺どおりだと反省し、以後の教訓にもなりました。
まさかの警備員が犯人
またこれもずいぶん昔の話ですが、夜の学校を施錠し警備するために雇っていた警備員が泥棒だったこともあります。
先生のパソコンや生徒の電子辞書が被害に遭いました。
特定の曜日に被害が集中したことや、絶対に施錠したはずの教室で被害が発生したことを不審に感じた教頭が、その警備員を疑って校内を尾行し、現行犯で捕まえたのです。
警備員はクラスを施錠するためにマスターキーを持っていますから、どの教室にも入り放題、盗り放題だったわけです…。
私の帰りがけ、
事務室にうな垂れた警備員と数人の警官がいて「!?」と思いましたが、
翌朝の打ち合わせでその事実を知り、
夜にはニュースでも報道されました。
パソコンを盗られた先生は、
自身の管理が甘かったからだ、と自分を責め、
私はその先生を慰め続けました。
生徒の電子辞書は、校内のとある場所からたくさん発見されましたが、
「もう使いたくない」
という生徒もいて、
「当然だな」
という思いとともに、
複雑な心境を覚えました。
盗難被害に遭わないために
当たり前のことですが、
盗難被害に遭わないためにできることを再確認しましょう。
①学校に不要な現金等を持ってこない
当たり前のことですが、学校に不必要な現金等は持ってこないことです。
そして自分がいま何をどれだけ持っているか?を把握しておくこと。
目立たないよう1,000円だけ抜かれるってこともあるからです。
現金以外でも、靴などフリマサイトで売れそうなものは持ってこないことを徹底してください。
教科書販売日などは全員が貴重品袋を活用してください。
②貴重品は先生に預ける
体育や移動教室に限らず、貴重品は先生に預けましょう。
面倒な気持ちはよくわかりますが、これは習慣化できるとそう苦ではなくなります。
③身から離れる時は施錠を徹底する
移動教室等で身から離れる時は、確実に教室を施錠します。
パソコンやタブレットは、個人ロッカーに入れて施錠!
暑くても天窓まで閉める!
1階なら外側も施錠することです。
さらに施錠・開錠は誰が行ったのか?を明確にしておく必要があります。
④名札を付けない来客を見たら先生に連絡する
どの学校も来校者は、事務室で受付をして入校許可の名札を付けています。
名札のない来校者は受付をせず侵入した可能性もあるので、念のため先生に連絡し、確認をしてもらいましょう。
もし被害に遭ったら

それでも最悪被害に遭ってしまったら、
できることは以下のとおりです。
①とにかく先生に通報する
たとえ少額でも、万が一自分の勘違いでも、念のため先生には報告しましょう。
一人で抱え込まないことが大切です。
②現場を友達に触らせない
盗難は警察が捜査することもあり、現場検証時にそのままの状態を保っておくことが求められます。
現状を保つことで解決のヒントが見つかることもあるからです。
③周囲には冷静に報告する
自分が被害者になると、一般的に冷静にはなれないものですが、
保護者や警察等に報告する時は、なるべく冷静になってください。
あなたの興奮がそのまま伝わって、これを聞いた周囲までもが理性を失ってしまうことも、、、
④報告は事実のみを簡潔に
盗難被害に遭うと、自分勝手にストーリーを作ってしまうことがあります。
「もしかして、○○の仕業か?」
など、勝手に誰かを疑ったりして、報告に「事実」と「憶測」が混在してしまうことがあるんですね。
報告を受ける側は、どこまでが事実かわからなくなるので、かえって問題が大きくなることも、、、
報告は事実のみを簡潔に伝える、ということを心掛けてください。
今回の記事は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
何かの参考になるとうれしいです。
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