いつもご覧いただき、ありがとうございます。
今日のテーマは「指定校推薦」
よく聞く進路用語ですが、具体的に説明できる高校生は少ないかもしれません。
指定校推薦とは、
大学等(短大や専門学校含む)が指定した高校に志願者の推薦を依頼する入試。
つまり大学等が指定する高校に、
「あなたの高校からうち(大学等)に相応しい生徒を推薦してください」
とお願いされることです。
これは大学等が、
「あなたの高校から条件に合う生徒を送ってください」
という意味ですから、
出願すれば合格は約束されたようなものなんですね。
「へぇー!そんなおいしい入試があるんだーー!(^^♪」
と飛びつきたくなるかもしれませんが、
おいしいだけではない現実もあるんですね。
今日は指定校推薦の仕組みと、利用した方がいい人としない方がいい人。
さらに合格~入学後のことも書こうと思います。
最後まで読んでいただけるとうれしいです。
指定校推薦の流れ
指定校推薦は、リード文にも書いたように大学等が指定した高校に「うちに来てほしい生徒を推薦してください」とラブコールを送る入試のこと。
ただし、評定〇.〇以上とか欠席〇日以内など条件が厳しく、1校から推薦できる人数にも制限があります。
さらに「現役」「専願(合格したら入学を確約する)」、「(依頼は)私立からのみ」というのも指定校推薦の大きな特徴です。
その流れは、
1学期中に指定する高校に指定校推薦の要項と願書が送られます
↓
高校側は指定校推薦を生徒に公開し、志願者を募ります
(高校によってはこれを非公開*とする学校もあります)
↓
志願する生徒は、条件を理解した上で高校にその旨を伝えます
↓
高校で校内選考が行われます
(推薦枠を超えた場合の絞り込みや、被推薦者として相応しいかどうか?の選考)
↓
校内選考をパスした生徒は願書等を準備します
(願書・調査書・受験料・志望理由書…等)
↓
大学等が指定した日に面接を受けに行く
↓
内定
↓
入学金等納入・入学確約書などの書類提出
↓
大学等が指定する課題に取り組む
↓
高校卒業
↓
入学
*安直に指定校推薦で合格を狙ったり、一般入試までがんばる生徒の多い高校は、あえて非公開とするところがあります
…となりますが、詳しくは以下でお話しましょう。
指定校推薦を掘り下げる
1学期中に指定する高校に指定校推薦の要項と願書が送られます
指定校推薦は、大学等が志願者の高校を「指定」する入試ですから、そもそもあなたの高校が「指定」されなければ、受験すらできないわけです。
高校によっては生徒の進路保障のため、喉から手が出るほど指定校が欲しいところもあります。
私も入試説明会に参加して「本校に指定校をいただけないでしょうか」と営業活動をしたこともありましたが、うまく行くことは滅多にありませんでしたね。
それは次の理由があるからです。
各大学等には「推薦を出す人数」が決まっていて、欲しくてもこれをもらえない高校がたくさんあるのです。
各大学等がどんな基準でどの高校を指定するのか?
は、諸説ありますが、一番多いのは「過去の受験者数とか入学者数」であることは間違いありません。
これはとある大学の担当者から直接聞いたことがあるからです。
しかしそんなに受験者がいないところからも推薦が来ることもあれば、上得意様なのに何の連絡もないところもありますね(;´∀`)
だから詳しい基準は、各校によって様々なんでしょうね。
しかし一度指定校に指定されれば、翌年以降も推薦依頼が来ることがほとんどです。
だから指定校推薦を狙っている人や、志望校がはっきりしている人は、
昨年度あなたの高校にどこからの指定校が来てたか?を、進路室等で早めに調べてみることをお勧めします。
高校側は指定校推薦を生徒に公開し、志願者を募ります
指定校の依頼を受けた各高校は、掲示等の方法でこれを生徒に公開します。
私の勤務した複数の高校では「公開」と「非公開」の両パターンがありました。
公開するのは一般の学力試験では合格が難しそうな高校(いわゆる教育困難校)。
非公開とするのは、地域の中堅校でしたが、これは「公開すると力のある生徒が早く決めたい一心で志願する」ことを防ぐためでした。
この高校は以前は公開でしたが、そういった志願者が多かったため方針を変更したのです。
方針変更してからは指定校での志願はぐんと減りました。
しかし「もったいないな」と思う大学にも「志願者がいない」という理由で、せっかくの推薦依頼をお返しすることもありましたね。
また教育困難校では、学力ではまず不可能な大学から指定校が来た場合、自校のエース級を送りたいものですが、そんな生徒に限って就職希望だったり、ダメ元志願したら競合相手がいなかった、あるいは「どうせ私なんかが志願しても…」と生徒同士が牽制し合って、フタを開けたら志願者ゼロ、というケースもありました。
とにかく指定校をどう活用するか?は難しいんですね…。
志願する生徒は、条件を理解した上で高校にその旨を伝えます
指定校推薦に志願する生徒は、高校にその旨を届け出ます。
指定校には評定や欠席日数に条件があるため、担任にそれを確認して、大丈夫なら保護者も同意する書類と、志望理由書を提出します。
また「専願」ですから、出願して合格したら、そこに進学することが絶対条件でもあります。
だからそれらの条件をすべて満たしていないと志願できません。
もちろん学費が支払える家計状況であることも重要な条件です。
さらに高校によっては志願する学校の「オープンキャンパスに参加していること」を、届けの条件にするところもあります。
高校で校内選考が行われます
9月初めごろに校長も入った校内選考会議が行われます。
志願者が定員内の場合も、本当にその生徒を推薦していいのか?を審議します。
また志願者が定員を超える時は誰かに絞らなければなりません。
担任は自分の生徒を推薦したいので、互いに強く推し合う形となりますが、多くは評定や生活態度で決まります。
しかし評定等に大きな差がない時は難航します。
指定校の校内選考は、その決定が生徒の進学を保障する重要な決定だからです。
詳しい中身は書けませんが、私は今でも「あの決定はあれでよかったのか?」と胸が痛くなる会議があります。
「あの時選考に落ちた○○君は今何をしているんだろう?」
何年も前に終わった会議を今も時々思い出し、胸が苦しくなることがあるのです。
校内選考をパスした生徒は願書等を準備します
校内選考をパスしたら、高校に来ている指定校用の願書など一式をもらって、出願準備に入ります。
出願は、願書、調査書(高校で作成)、受験料の他に、志願理由書や自己アピール文、進学後にやりたいこと等が指定されます。
指定校の出願は、最終高校が書類を点検して、高校から発送するケースが多いようです。
大学等が指定した日に面接を受けに行く
指定校推薦に学力試験はありません。
一応「面接」はありますが、社交辞令的なもので、志望理由に加え、入学の意志と入学後の抱負を中心に聞かれるくらいです。
ただ「さすがにこれはダメだ」と思われたら、指定校であってもダメなケースは稀~にあります。
高校でしっかりと練習を重ねておくことをお勧めします。
内定
面接後10日前後で内定通知が来ます。
指定校は基本不合格のない入試ですが、それでも内定通知が来ると「ホッと」しますね。
しかし内定=ゴールではありません。
入学までにやらなければいけないことがいくつかありますし、
入学後の追跡調査(後述)もあるので、ウカウカしてはいられませんよ。
入学金等納入・入学確約書などの書類提出
合格内定後は入学金や授業料を指定日までに納入します。
大学で奨学金を考えている人もいると思いますが、奨学金は「入学後」しか借りられないので注意してください。(保護者名義で教育ローンの借り入れは可)
また指定校推薦は「専願」なので、入学確約書の提出は必須ですね。
期日までに必ず行いましょう。
大学等が指定する課題に取り組む
指定校推薦は早く決まる分入学まで時間があるし、安心して勉強をしなくなるので、多くの学校では入学までに取り組む「課題」が課されます。
課題は提出期限が決まっていて、これを遅れたら「内定取り消し」となることもあります。
バイト、免許、卒業旅行に浮かれ過ぎてはいけませんよ。
入学後から出遅れないよう、しっかりと取り組んでください。
高校卒業→入学
万が一にも、高校を卒業できなかった(-_-;)ということがないように(笑)
安心してサボり過ぎてはいけませんよ(;’∀’)
指定校推薦を利用する方がいい人、しない方がいい人
利用する方がいい人
指定校推薦は大学以外の短大や専門学校からも依頼が来ます。
また一般入試では太刀打ちできない教育困難校にも「おいしい」指定校が来る場合があります。
そんな事情から、次の条件すべてに当てはまる人には指定校推薦の出願をお勧めします。
1,鉄板の第1希望校から指定校の依頼が来ている
2,指定校で出願することで入学金等の減免措置が受けられる
(または)一般入試では太刀打ちできない学校である
3,遅刻欠席が少なく、評定平均値の条件をクリアしている
受験料や入学金の減免を謳うのは、生徒募集に悩む専門学校等によくある措置ですが、同じ専願で出願する総合型選抜(AO)との違いはよく見比べてから出願するようにしましょう。
入試対策は、以下の外部リンクも参考にしてください。
利用しない方がいい人
これは先述と反対の人です。
指定校は私立だけが出す入試ですから、国公立を第1志望に据えている人にはそもそも関係ない制度です。
そして今志望校を迷っている人にもお勧めしません。
また「早く決めたい」という思いから出願して、後に大問題となるケースもあるので、安易に飛びつかないようにお願いします。
さらに進学校では基本的に指定校推薦を推奨しません。
一般まで粘ればさらに伸びる要素があるし、集団のモチベーションを維持するためにも、早期に決まる生徒をなるべく出したくない、と思うのが本音です。
詳しくは以下外部リンクから状況をご確認ください。
指定校推薦で合格したら?
指定校推薦は専願で比較的早く合格が内定するので、生徒によってはその後グダグダになってしまう子がいます。
「高校なんて卒業できればいい」とか、バイトや免許、卒業旅行で頭の中はパラダイス状態で、周囲に受験生がいるのもお構いなく、周りから顰蹙を買う生徒も出てきます。
当然勉強なんてしないから、学力は落ちる一方なんですね(;’∀’)
そんな状況を鑑みて、多くの学校では指定校内定者を対象に「入学前課題」が課されることがあります。
中には「これを提出しないと内定を取り消す場合があります」なんて脅し文句までついてることがあるので、必ずやりましょうね。
そして入学後も「追跡調査」がありまして、
出席率や成績、生活態度などがデータ化されていきます。
これは今後の指定校推薦を出す際に参考とされるデータとなります。
指定校推薦は「高い期待と責任」を背負って合格を約束される入試なので、この期待に沿わない学生と判断されれば、次年度以降母校への推薦依頼が消滅することもあるのです。
自分勝手な行いで後輩の足を引っ張らないよう、入学後も気を緩めないように気をつけてくださいね。
まとめ
指定校は受験生にも「おいしい」一面があるとともに、指定校を出す大学等にも利益がある入試制度です。
学力だけで入学者を選抜すれば、入学できるのは点を取れる生徒ばかりとなり、多様性ある学生集団とならない可能性があります。
少々学力不足でも、その道に進む強い意志があり、コツコツ地道に努力できる学生を高校が責任を持って推薦してくれる制度ですから、進学先にとっても「おいしい」制度なんですね。
しかし先述のように、「早く決める」ためだけに志願し、結果周囲に悪い影響を及ぼす悪用例もありますから、制度の運用には慎重な対応が必要です。
指定校に関わる人は、そんな功罪をしっかりと理解した上で、適切な運用と利用を心掛けてくださいね。
みなさんの進路決定が、自分に合った最良の選択となりますようお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ではでは、、、また次回、、、
コメント