【丁寧な文字】を書こう_文字には”人”そのものが宿っている

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新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

また元旦に発生した能登半島地震で被災された方には、心からお見舞い申し上げます。

さて、新年一発目のテーマは【文字】です。

小中学校時代は、お正月に「書き初め」をしましたね。
冬休みの宿題だから、仕方なくやった人がほとんどだと思いますが、
これは新年に「文字の上達を願って」筆をふるう伝統行事です。

しかし近年は、スマホの普及や学校のICT化も伴って、手で文字を書く機会はずいぶん少なくなりました。

…ですが、少なくなったとはいっても、
手で文字を書く文化が完全に廃れることはないでしょう。

そこで今日のテーマとなるわけです。

これを新年のテーマとしたのには、私自身も”生徒が書く文字”に嫌悪感を覚え、不快な思いをしたことがあるからです。

特に高校入試の採点は、絶対に間違いが無いよう、相当慎重に行いますが、それでも判読不可能な答案は「意外に多い」んですね(;’∀’)

「ウソだ!?」と思う人は、採点の苦労を綴った過去記事もご覧ください。

今日は、文字を丁寧に書くことのメリットや、
どうすれば読みやすい文字になるか?を記事にします。

さらに、手書きの文字は、短いたった「数本の線の集まり」に過ぎないのに、
1文字見ただけでも、誰の筆跡か?がすぐにわかることもあります。
それくらい「字は人そのもの」を現すツールだということも併せて書きたいと思います。

また、字は不思議なもので、年を重ねる程どんどん自分の「型」ができてしまい、修正が難しくなるものです。
だから大人の方が、圧倒的に読みにくい字を書く人が多いのも、事実なんですね。

しかしみなさんはまだ柔軟な高校生です。
いまそんな意識をもって、自分の字を見つめ直す機会になれば、と願って執筆します。

最後まで読んでいただけるとうれしいです。

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書は人なり

いま私たちが使っている文字は、はるか昔、中国で作られたものです。
記録に残る最古のものは「甲骨文字」という、亀の甲や獣骨に刻まれたもの。
これは「占い」に使うために作られたものだ、といわれています。

その後は、より書きやすく読みやすく、さらに美しく改良された文字は、我が国にも舶載され、そこから平仮名や片仮名も派生しました。

奈良~平安時代にはすでに「美しい文字を書けること」が、教養の一つでもあったようです。

さらに、
「書は人なり」
とか、
「心正しければ即ち筆正し」

…など、筆跡がその人そのものを表出するもの、という考えも古くからあります。

高僧の書が高く評価されるのには、そんな思想があるからなんですね。

なぜ日本と中国だけ?

しかし単なる「伝達記号」であるはずの文字に、なぜ「価値」や「美醜」を感じるのか?

これは漢字を使う日本と中国(一部朝鮮半島)のみの美意識なんですが、そこにはこんな理由があります。

漢字の数が多いから
占いに用いるために作られたから
毛筆で表記したから

漢字の数が多いから

アルファベットは26文字、ひらがなやカタカナは48文字しかないのに比べ、
漢字には数千~数万の種類があるんですね。
日本に生まれたばかりに、漢字テストを受ける羽目になったのは、こんな事情もあるからです。

数が多い、ということはイコール、多彩な造形がある、ということです。

さらに漢字には多様な書体もあります。
印鑑の文字に使う篆書てんしょや、崩したもの(草書そうしょ)などもありますが、
中国・日本とも、今もこれらを廃していません。
これは、それだけ多くの表現がある、ことを意味するのです。

占いに用いるために作られたから

甲骨文字は亀の甲や獣骨に刻まれた、占いに使う文字だったようです。

「明日西方へ旅をしてもよいか?」
などと刻んで、これを火にくべ、しばらくするとそこにひび割れが生じたその形を見て吉凶を占った、といわれます。
”占”字は、上の「ト」が、そのひび割れを表し、それが言葉になったもの=「口」を合体してできた漢字(会意文字)なんですね。

中国殷周時代には、そんな神の存在を信じるシャーマニズムの信仰があり、
文字は「神との対話」に使う神聖なツールでもあったので、
以来、美しい筆跡を尊重するという価値観が生まれたのです。

毛筆で表記したから

文字に美醜や人間性、芸術性を与えた最も大きな要素は、毛筆という筆記具を用いたからです。

文字は単に意味を伝達する記号ではなく、毛筆を使ったことで多彩な表現が可能となったため、
人間性や芸術性などが表出されるようになりました。

今でこそ毛筆は特別な筆記具ですが、昔の人にとっては、私たちのペンや鉛筆のような感覚で使われていたはずです。

ペンや鉛筆で書かれた文字も、見慣れた筆跡なら「誰の」ものかがすぐに判別できますが、より多彩な表現ができる毛筆では、それがさらにはっきりと表れたのではないか、と思われるのです。

味とクセは違うもの

個性とは

私は「文字は丁寧に書くものだ」と思っていますが、

「お習字の手本」のような文字を書け、
と言っているわけではありません。

先にも書いたように、
文字は人それぞれのものですから、
手本のような字は、美しくても没個性と言わざるを得ません。

ではなぜ習字を習うのか?
というと、それは、

美しい字のスタンダードを知る

ことが大切であり、そこには文字を読みやすく書くポイントが詰まっているからです。

そしていくら習字をしても、人の字はそれと同じようには書けません。
現に多くの習字手本だって、見比べればずいぶんと違うものなんですよ。

これはどんなに隠そうとしても、絶対に隠し切れないものがある、ということですが、
それが本当の意味での「個性」なんでしょうね。

個性的

現代は「個の時代」ともいわれ、個人の尊厳に加え、個性や人権が尊重される時代です。

私はこの風潮を否定するつもりはありませんが、
時に「?」と感じることもあるんですね。

それは、
「個性的」と一括りにすれば、何をしても許されるのか?
という一点です。

中には「他人と違ったこと」がすべて個性的みたいにいわれますが、
「そうじゃないだろう」
と、私は思っちゃうんですね。

字だって、どんな書き方をしても、
「これが個性的だ」
と言い切ってしまえば通用する、、、
はずはありません。

「あの人の字にはクセがある」
と言えば、個性を”悪い意味”と評する言い方ですが、
逆に、
「あの人の字には味がある」
と言うと、”よい意味”で評する言い方になります。

この「味」「クセ」は、似て非なるものですが、
さて、何が違うのでしょうか?

「味」は磨かれた個性

この違いはズバリ!

磨かれた個性か?否か?

です。

個性的と括っちゃうと、
赤ちゃんや犬猫にだって個性はあります。

しかしここでいう「個性」とは、
磨かれた個性=味
なんですね。

日本人なら誰だって文字の読み書きくらいはできますが、
読みやすくて味のある字を書く人は、そう多くはありません。
「クセの強い」文字が大多数なんですね。

これは”楽器”に例えるとわかりやすいんですが、
ピアノをぐちゃぐちゃに弾いても、
音は出るけど、聞くに堪えないものになりますよね。

一方で、基礎基本を習得し、練習を積んだ人が弾く音色は、
すごい手の動きでも美しいものです。

我々は誰もが自分の文字を書けますが、
これが磨かれたものか?否か?で、
大きく違う結果になることは、
この例えからもご理解いただけるはずです。

たかが文字、されど文字

なんですね。

文字は誰かに読んでもらうために書くもの

ではなぜ丁寧な文字を心掛けるのか?
というと、

文字は誰かが「読む」ものだから

です。

ちょっとしたメモでも、後に自分で読み返すことだってありますから、
文字は誰かに読まれるために書くものなんですね。

しかし時に”書いた本人”ですら読めない字を書くって、、、どうなんでしょう?

そんな字を書く人は個人的に、
読む人の立場を考えない「自分本位な人」だとさえ思うことがあります。
「いや、そんなことはない」と反論されそうですが、

書く立場ではそう思わなくても、
読む立場の人が実際どう感じているかは「わからない」のです。

そういった意味で、私たちは文字を丁寧に書く必要性がある、といえるのではないでしょうか。
読む人のためにも、自分のためにも、です。

読みやすい文字を書くポイント

先述のように、私はみなさんに、
「お習字の手本」みたいに書きなさい、
とは言いません。

…ですが、活字みたいに書けば、いくら読みやすくても機械的な印象になりますね。

では手書きで読みやすく、機械的でない書き方はどうすればいいでしょう?

以下は私が懇意にする書道科のS先生にも助言をいただいた内容です。
簡単なポイントさえ意識すれば、ある程度はマシになるはずです。

文字のすき間(余白・空間)を意識して書く

S先生曰く、

文字はすき間(余白・空間)で決まる

とのこと。

読みやすい文字は、文字中の
「空間が必ず一定している」
んですね。

これは、活字を見れば一目瞭然!
どの空間も均等に配されています。

←横の空間が均一です

←縦と横の空間が均一です

↑これは何の違和感もなく見られますよね。

しかしこの字を早書きするとわかりますが、
大抵は、縦横3つのすき間がバラバラになるんですね。

空間が均一でない字に、私たちは違和感を覚えます。

余白=余った白
と書きますが、
逆に”必要な白”という意味で、
「ホントは”要白”の方が相応しい」
とS先生は仰います。

私たちは「黒いところ」ばかりを意識して字を書きますが、
書かれない「白」をどう残すか?
を意識して書くと、読みやすい文字になるそうです。

また「角度」もバラバラだと、落ち着かない印象にもなります。
手書きの字は、
横線をやや右上がりに揃えるといいそうです。
時計の長針が14分を指す角度が目安、
とのこと。

ぜひみなさんも試してみてくださいね。

文字の大きさを意識して書く

読みやすい字は、適度な大きさで書かれています。

目安は、
罫線がある場合なら、罫の8割ほどが読みやすい大きさです。

また「漢字とかなが交じる」日本語は、
その大きさを、

漢字>かな

とし、その割合は概ね10:8ほどに。

これは相対的に漢字の方が画数が多いから、なんですね。

これも「空間」をバランスよくとるために、
意識した方がいいポイントだそうです。

筆圧を意識して書く

これも日頃気にする人は少ないんですが、
筆記具によって適度な筆圧があり、
それを意識して書くといいそうです。

強すぎても弱すぎてもダメで、
線がすっきりと見える力のかけ方で書く方がいい。

特に筆圧が強すぎる人は、余計な力で書いているため、
手が疲れやすく、勉強も長続きしない人が多い、とのこと。

目安としては、
下敷きを使わずに書いて、
裏面がボコボコしない筆圧を目安にしてください。

とのことです。

正しい筆順で書く

筆順なんて気にしなくていいよ
という人が大多数ですが、
筆順は「なぜ決まっているのか?」
を考えたことはありますか?

筆順は、

文字を早く、美しく、書きやすくするために決められたもの

であり、字を習うと、その重要性がよくわかるそうです。

間違いやすい筆順はたくさんあって、ここに紹介することはできませんが、
今は筆順を調べるアプリもあるので、あなたのスマホにもインストールして、疑問に思ったら調べてみる習慣をつけてはいかがでしょうか。

以下関連記事も参照してください。

筆順は、なぜ大切か | 書写の疑問、すべて解決! | 中学校 書写 | 光村図書出版
全国各地から寄せられる質問は、教科書に関することはもちろん、筆順や文字の成り立ち、書写教育の歴史にいたるまで、バラエティーに富んだ内容です。そのなかから代表的なものを選んで、編集部としての見解を交えつつ解説をしていきます。
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最後に_なぜ身だしなみに拘るように字に拘らないのか

S先生曰く、
「文字の書き方にはもっとたくさんの法則があって、実は難しいもの」
なんだそうです。

「しかしあまり法則法則でがんじがらめにすると、それはお習字の手本のようになり、
その人らしさが消えてしまう」


「だから最低限の法則でいいから、これを意識して書くほうがいい」


「しかし美しい文字のスタンダードを知ることは無駄ではなく、さらに美しい文字を書くには必要なこと。習字はそのために習うようなもの」

新しい年の初めに、みなさんは決意も新たにして3学期~新学年や新転地を過ごしたい、と思っているはずです。

自分がどう見られているか?
身なりや化粧を気にするのと同様に、
書かれる文字も、その”人そのもの”だ、という意識を持ってほしいですね。

それは、
文字は読まれるために書くもの
であり、
書く側は、読む側が”どう見るか?”を考えて書くべき
だと思うからです。

人の立場に立って…
とはよく聞くセリフですが、
文字を書く人には、読む人の立場に立つ、という意識が少ないな、、、
と思うことが少なくありません。
書く側はわかって書いているつもりでも、
読む側には読みにくい(読めない)場合もあることを考えて、
少しの配慮ができる人になりたいですね。

その一方で、読みやすく好感を抱く字を書く人もたくさんいます。
そんな人は総じて穏やかで優しい人柄で、それが字に現れていると感じるのは私だけではないでしょう。

いい意味でも悪い意味でも、やはり
「字は人なり」
なんだな、と思う年の初めです。
みなさんもぜひ、

読みやすい字を目指しましょう!

そして、
今年一年も、みなさんの高校生活がより充実したものでありますように…

本ブログを通して高校生のみなさんを全力で応援したいと思っています。
どうか今年もよろしくお願い申し上げます。

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