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今日のテーマは【先生】
なぜこんなテーマを思いついたか?というと、
在職時代によく生徒から質問を受けたからです。
特に4月は人事異動の時期で、
進学校に異動が決まった先生は、生徒から
「あの先生は賢い」
と言われ、
教育困難校(以下、困難校といいます)に異動が決まると、
「あの先生アホなん?」
的な質問が来るんですね(;’∀’)
私も自分が高校生だったころはそう思ってました。
「進学校の先生は授業も難しいから賢いんだ」ってね(;´∀`)
しかし現実はずいぶん違います。
今日は先生の仕事が、授業や部活動だけではない多岐に渡る実態と、
どの学校にどんな能力が求められるのか?
なんていう、高校生にはあまり関心のない?テーマで記事を書きます。
今日の記事は若い先生に向けた内容になりますが、
おそらく、高校生が読んでも先生を見る目が、少しは変わると思いますよ。
最後まで読んでいただけるとうれしいです。
どっちが大変?
一般的に言われるのは、
進学校の生徒は勉強もできるし、先生にも逆らわないが、
困難校は問題起こすし、先生の言うことなんて聞かない。
だから進学校の先生の方が賢くて楽、という概念です。
もちろん全くの間違いではありませんが、
先生の仕事はそんな杓子定規に測れるものではないんですね。
それを証拠に公立の先生は、
勤務校による給料の差はありません。
これは学校により「大変さ」の質が違う、ことを意味します。
私自身も進学校にも困難校にも、中堅校にも勤務したことがあるので、
その違いを簡単な表にしてみますね。
(あくまでも個人の私見であります)
進学校 | 困難校 | |
---|---|---|
学習指導 | 授業のレベルが高く進度も早いので、教材研究が大変 補習や採点業務が多い | 授業レベルは低いが、50分間生徒を飽きさせないテクニックや仕掛けが必要 自己肯定感が低い生徒への対応力が必要 |
生活指導 | 基本的に校則は緩く、生徒指導に手がかからない | 比較的問題行動が多く、保護者との連携や生徒指導が大変 校則は厳しめ |
進路指導 | 進路実績が問われるので、進路指導は大変 進路情報力や分析力が求められる | 基本全入の短大や専門学校希望者が多い 就職希望も一定数いる 2学期末までにはほぼ決まっている |
部活動 | 基本的に活発だが、自主的に活動してくれる | 帰宅部が多く、活発な部は少数 熱心な顧問が引っ張ると強くなる (生徒が自信をつける) |
不登校 | 学習面が要因となる場合が多い | 学習面以外の要因が多い |
行事 | 活発で大いに盛り上がる 自分たちでやる | リーダーが少ない 担任が引っ張るクラスも多い |
その他 | 生徒が長時間学校にいるため、 先生の帰宅時間は遅くなる傾向 | 学校嫌いの生徒が多く、放課後の校舎は静か 先生の帰宅時間は早め |
…という感じでしょうか。
もちろん多岐に渡る教育活動を、こんな表の一言で片付けるのは乱暴ですが、
「大まかな傾向」としてご理解ください。
この表でわかるのは、
学校によって苦労のポイントが違う
ということ。
学習指導や進路指導で大変なところもあれば、
自己肯定感の低い生徒への生活指導や行事面で、大変な学校もあります。
さらに生徒の実態に応じたカウンセリングマインドも必要ですから、
その能力は多岐に渡っていることがおわかりでしょう。
つまりトータルで考えると、
大変さのベクトルが違うだけで、どこもそれなりに大変なんですね。
だからどの学校に行っても給料は”同じ”になってるんですね。
多様な学校に勤務してスキルアップを目指す
どの地域でも、公立の先生は何年かおきに”人事異動(転勤)”があります。
私も在職中は4つの高校を経験しました。
初任校は地域ではそれなりの進学校でした
私の初任時代は今と比べ高校生の数がとても多い時代。
1クラスに47人いる時代でした。
進学校ですから、学習面や進路面の指導が重視されましたが、生徒数が多い分、大学入試の倍率も今と比較して格段に高く、受けても受けても不合格ばかり(-_-;)
同じ偏差値の子が今では楽に入れる大学に、落ちまくるんですね、、、
「自主自律」という校訓も空しく、
「自主自滅」なんて揶揄されて、大量の浪人生を出してしまったのです。
「4年制高校」とも言われましたね(;´∀`)
そんな反省から、
「生徒の自主性に任せてはいけない」
という風潮が起こり、
盛んに進学補習を行うようになった経緯があります。
自称進学校でしたが、職員室は生徒から「老人ホーム」と言われ、
「生徒の自主性を尊重する」
なんて大義名分の元、楽をする教師が多い学校でもあったんですね。
今思えば、初任で勤務するには少し「ぬるま湯」だったのかもしれません。
生徒は歳の近い私にとても懐いてくれましたが、
そのおかげで、ここではいろいろなことを生徒から教えてもらったような気がします。
2校目は地域の底辺校でした。
しかし次に転勤した学校は、まるで違った環境(;’∀’)
初任校での「基準」が全く通用しない別世界に、面食らう経験をします。
4月、生徒登校日の初日から、掃除の時間に生徒と大ゲンカしちゃいましてね(;’∀’)
ゴミを誰が捨てに行くか?っていう小さなことだったんですが、
「行きなさい」
「イヤだ」
の繰り返しで、私もエキサイトして大きな声を出したら、
「デカい声出したら、言うこと聞くと思ってんのか!」
と返されて、何も言えなくなりました。
その騒ぎを聞きつけた担任が飛んできて彼を連れ出し、
中庭で話をされて、、、
その後「ご迷惑をおかけしました」と頭を下げに行ったら、
「ま、あんまり熱くならないように…」
と釘を刺された勤務スタートでした。
ここはコンプレックスの塊のような生徒ばかり。
自分に自信がなく、他人を信用しない。
反抗や威嚇、または閉じこもることで自分を守る生徒が多い学校です。
問題行動や中途退学、進路変更もかなり多かったですし、、、
そんな生徒達へ、
どう自信をつけさせ、どう信頼関係を築くか?
が、求められる教師像だったんですね。
進学校での進路指導や入試対策も大変ですが、
こっちもかなり大変な仕事だ、と気付くのに時間はかかりませんでした。
ここで学んだのは、
いかにわかりやすい授業をするか?
ということや、
少しでも自己肯定感を高めるにはどうするか?
ということでした。
そんな”満足”を感じたことのない生徒が大多数だったんですね。
ただ、放課後はほとんどの生徒が帰ってしまうので、
恐ろしく静かな学校でした。
おかげ?で、帰宅時間も早く、
ちょうどうちの子も小さかったので、
たくさん遊んでやれた、というメリットもありましたね。
3校目は地域の中堅校でした。
次に異動したのは、地域の中堅校。
女子の比率が高く、落ち着いた生徒が多い人気校です。
ここは妻の母校でもあり、
転勤が決まったその日、
「これからは楽ができるね」
と言うので、
「なんで?」
と聞いたら、
「先生はコーヒーばっか飲んでた」
と…(^^;
実際赴任してみたら、
授業態度もいいし、部活加入率も高い。
しかし学習面ではいまひとつ自信がないんですね。
勉強がんばるより「今を楽しみたい」って生徒が多い雰囲気で、
力はあるのに、その能力を十分発揮できてない生徒が多い学校です。
進学や部活の実績も、パッとするものはなく、
「力あるのに、もったいないな~」
と、すぐに感じました。
ここに私は12年間勤務しましたが、
その間最も力を入れたのは「部活」でした。
初年度から才能豊かな生徒に出会ったのがきっかけで、
彼女も私の指導に応え、グングン力をつけてくれるのが楽しくて…(笑)
部活で自信をつけた生徒は、引退後の受験勉強もがんばるんですね~
「やればできる」
という一言を、身をもって体感した生徒は、
「楽しさ」ばかりではなく「厳しさ」も求め、その先にある何かを期待して努力を惜しまない人に成長します。
「苦労が報われる」
教師としてこんなにうれしいことはありません。
「これぞ教師のやりがい」
そんないい経験ができた12年間でした。
ここで学んだことは、
生徒の適性をいかに引き出し、いかに伸ばすか?
ということだったように思います。
4校目は再び別の困難校に
そして最後は再び地域の困難校に異動となりました。
これまでとはまた異なる教育課題を抱える学校で、最初に取り組んだのは、ASDをはじめとする発達障がいを抱える生徒への対応でした。
これまで常識的に行ってきた座席配置や一斉授業への概念、
また生徒以外には滅多に見せない自身の授業を積極的に公開し、教員全体の授業力向上を図る体制があり、最初は面食らいましたね。
前任校では30人ほどいた部活も、異動後は部員1人という寂しい状況です。
これまで自分が築き上げてきたものが、異動によってすべて否定されたような気分にもなりましたが、
ここでも私を救ってくれたのは生徒達でした。
発想の転換は、とある分野に特化した小さな町工場の特集をテレビでやっていたことでした。
「今までの部を大企業だとしたら、今は中小企業なんだけど、中小には中小にしかできない”強み”があるんじゃないか?」
と思ったんですね。
幸い個人競技だったので、
「今の1人を丁寧に育ててやろう」
「これは今の体制でしかできないこと」
だと考え方を変えたことが功を奏しました。
団体戦には出られないけど、個人指導が”強み”となる方向に舵を切る、
と割り切って部を運営することで、当該校では縁のなかった全国大会にも選抜されましたが、
そんな発想の転換を与えてくれた”環境”に感謝だし、その指導に1人でついてきてくれた生徒にも感謝です。
卒業時、
「僕が全国に行けるのはがんばってくれた生徒のおかげ」と先生は言うけど、
先生の指導があってこそ私は全国に行けた。
と手紙をくれた子がいました。
あの時、腐らず発想の転換をしたことが、いい形で実を結んだんですね。
どの学校にも、それぞれに違う課題ややりがいがあり、それに適応しながら指導力を高めていく。
これがいろんな学校に勤務する教師の醍醐味でもある、と私自身は考えます。
どんな「やりがい」を求めるか?
私もこれまでいくつかの学校で、たくさんの先生を見てきましたが、
どの学校にも「活躍する先生」と「いまひとつな先生」がいるもんです。
これを一概に「本人のやる気」や「適性」と一括りにはできないのが、教員配置の難しい点だと思います。
先生のやる気はあっても、本人の病気や父母の介護、まだ小さい子どもの世話…など、各々に違った背景があるからです。
こんな背景は誰にでも言うことじゃないし、本人を責めるべきものでもありません。
先生の適性を最大限に発揮できるように
私が最も教員配置で大切だと考えるのが、
先生の適性
です。
進学校には進学校に向くタイプの先生がいるし、
困難校には困難校に合う先生がいます。
だから、転勤のない私立の先生は、自分にマッチした学校に勤められたらラッキーだな、
って思いますね。
その学校の方向性に特化した指導をすればいいので、マッチング次第だな~と思うのです。
私がいた県では過去に、進学校と困難校を行き来する人事を推奨していましたが、今はその影も薄くなりました。
どこもそうなんでしょうけど、
現実人事異動希望は、
圧倒的に進学校を希望する先生が多い
んですね。
やはり教師である以上「教科で勝負したい」というのが本音なんです。
しかし教師の仕事はそれだけに止まりません。
教科指導以外にも、進路指導や生徒指導、部活動、カウンセリングや人権教育、PTAや図書…など多彩な能力が必要とされますが、
年数を経るごとに「自分の持ち味」が出てくるもので、そんな「適性」を大切に適材適所に配していくのが理想的だと思います。
だから若いうちに、進学校と困難校を数年ずつ経験したうえで、
各先生の持ち味が最も発揮できる学校や分掌で、後半はじっくり取り組んでもらう体制が欲しいな~
と思いますね。
管理職だってもっと早くから登用するのもあり、だと思います。
もちろん現実はそんな理想的にはいかないのでしょうし、
その適性を見極める管理職の目だって、どこまで信頼できるか?
なんて誰にもわかりませんからね(;’∀’)
高校の特色にも更なる改革を
またこれは意外に知られていないことですが、
学校のシステムというのは、そのほとんどが法律で決まっていること
なんですね。
教員の定数や給与、時間割や休み、授業の内容やカリキュラム、単位認定をはじめ、
教室の広さや明るさ、黒板の「向き」までもが法律で決まっているのです。
もちろん類型や選択科目があったり、SSHや職業に特化した学校もありますが、
それでも法律の域を超えることはできません。
*SSH=スーパーサイエンスハイスクールの略
これを「全廃しろ」とは思いませんが、
現実もう少し柔軟になってもいいのではないか?
というのが私個人の意見です。
口では「多様化!多様化!」と言いながら、片方では法律で動けなくしているところに、
学校教育の限界を感じるんですね。
諸外国のように○○に特化した学校
さらに柔軟な教育課程の編成
が欲しいな、と思っています。
まとめ
今日は先生に特化した内容になり、高校生のみなさんには「ちょっとわかりにくい」内容だったかもしれません。
しかし先生だって人間。
すべての仕事が完璧でもなければ、向き不向きはいくつになってもあるものです。
高校生のみなさんにこう言うとがっかりするかもしれませんが、これが現実である以上、みなさんは先生を「どう見て」「どう接するか」をよく考えましょう。
私は、先生の「得意」を見極めて、その点に十分な指導が受けられたらいいのでは?
と割り切れば…と思っています。
そして学校ですべてを補うのはなく、それを補助するツールはたくさんあります。
ITなどを上手く活用して、あなた自身が賢くなりましょう。
総じて学校内の価値観や考えは「古い」ですからね。
現在の価値観は、あくまでも現在の価値観であり、普遍的ではないのです。
今後の未来を正確に予測できる人は誰もいませんが、
1つ確実なのは、どんどん新しいシステムやツール、価値観が生まれることです。
そんな変化に対応できる人が有利に生きていける時代となるはずですから、
みなさんも柔軟な思考力を持ってこれからの未来を生き抜いてくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ではでは、、、また次回、、、
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