【不登校】_「刷り込み」の怖さと「待つ」ことの大切さ

保護者向け
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いつもご覧いただき、ありがとうございます。

今日のテーマは「不登校」
私もこれまで何人もの不登校生徒と関わってきました。
不登校生徒は、うまく行かない自分の人生に、辛い思いと焦りを抱えています。

不登校の原因や状態は人それぞれで、その対応も様々ですから、決まったマニュアルがあるわけではありません。
しかし、不登校になった生徒本人や、家族には、一定の考え方が必要です。
それは、

  • 解決を焦らない
  • 変化を恐れない

ことです。

・早く学校に行った方が良い
・せっかく入った高校を辞めたくない
・親を悲しませたくない
・怖くて友だちと話せない

…と、解決を焦ったり、変化を恐れて前に踏み出せないこと…
このどちらにも偏らない考え方を持つこと(=難しいことです)…が求められます。

私は臨床心理士等の資格を持つ専門家ではありませんが、学校現場で長く関わってきた中の一人として、所見を述べたいと思います。

本稿は、昨年上梓した拙著より加筆訂正したものです。
活字だらけの今回ですが、最後まで読んでいただけるとうれしいです。

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「刷り込み」の怖さ

これまで学級担任や学年主任を経験し、多くの不登校生徒と関わってきました。特に高校は義務教育ではありませんから、長期の欠席=原級留置(留年)の心配にもなるので、親子ともに大きな不安材料となり、本人以上に特に母親が狼狽するケースが多いように感じています。保護者は「まさかうちの子が…」という思いとともに「学校で何か嫌なことがあったのでは…?」とか「自分の育て方に問題があるのでは…?」と、その原因を突き止めたくなるものです。しかし、不登校の原因は多様で、中には特に理由なくある日突然ガス欠になるような生徒もいます。自分自身でも知りたい理由がわからない生徒もいるのですから、対応は難しいわけです。ただこれだけは確かだと思うこと…それは不登校が「自分が壊れないように自分を守る行為」だということです。もちろん不登校は、いじめ等の人間関係だけが要因ではなく、不本意入学や、進学校に多い挫折パターンや燃え尽き症候群、自分以外の誰も意識しないほどさらりと聞こえた一言がその引き金になることや、軽度の障がいが原因の場合だってあります。だから無理に原因を追及しようとせず、まずは「現状を (本人も周りも)受け入れる」ことが何よりも大切です。不登校は怠けではなく、心が風邪を引いた状態だと考えて、苦しんでいる本人を責めることのないように周りがサポートしてあげてください。風邪を引いた時も、原因を追求するより、これを受け入れ治療に専念することを優先するのに似ていると思います。

不登校の症状を悪化させるのが「刷り込み」「思い込み」です。例えば「学校を休んではいけない」という刷り込み(思い込み)は、不登校生徒には逆効果です。「なぜ休んではいけないのか?」と聞かれると、大抵は「授業に遅れる」とか「留年する」「周りから孤立する」という答えしか返せませんよね。これは間違いではありませんが、「それがわかっていて出来ないから苦しいんだ」と本人を余計な窮地に追い込む結果となるので逆効果なのです。こういう時は、周囲の見方や常識的な考え方を受け入れる気持ちの余裕はないし、自分をわかってくれないとも思っているので「余計に苦しい思いをするならこの人とは今後関わりたくない」とさえ思わせてしまいます。本人の言う「学校に行けない理由」も本心でないこともあり、とにかく関わりたくない人から逃れるために、それらしい理由を並べて、その場を取り繕うことだってあります。要するに自分でもその原因や見通しが見えないから苦しくて前向きな気持ちにはなれないのです。だから不登校生徒はほぼ例外なくマイナス思考を誘引する刷り込みと思い込みに縛られて悲観的になり、なかなかその負のスパイラルから抜け出せずに苦しみます。

「待つ」ことの大切さ

私はそんな親や生徒に最も有効なのは「待つこと」だと思っています。本人だってこのままの状態でいいとは絶対に思っていないわけですし、頭の中では色々と考えているし、見えない不安とも必死に戦っているのです。そんな繰り返しで時間の流れが少しずつ人を変えていきますから、周囲はそれをじっと「待つ」んです。もちろん放ったままではいけません。本人の不安な気持ちが吐き出せるよう、いつでも話が聞ける心構えをしておくことや、本人が医療機関での治療やカウンセリングを望むなら、それに対応できるよう情報収集に努めることも可能です。とにかく周囲の価値観を刷り込まず、本人のペースと気持ちに添ったサポートをしてあげてください。また保護者や先生自身がカウンセリングを受けて話を聞いてもらうことで、援助者の考え方や出来るサポートを見直すことも、有益だと思います。そして本人に良い傾向が見られたら、静かにそれを受け入れて本人以上に喜ばないことです。この行為がそれまでの本人を「否定」する意味にもなるからです。不登校はとにかく本人目線で対応することが何よりも重要で「自分は大切にされる存在」との思いが立ち直りを早めるのです。

厚生労働省のホームページにリンクします

不登校は「今の環境を変えること」が立ち直りに向かう第一歩です。在籍校への復帰も本人にとっては勇気のいる大きな環境の変化ですし、それ以外にも、部活の転退休部、通信制への転学、バイトを始めた…等で嘘のように変わった生徒をたくさん見てきました。もちろんそれを決心するまでの葛藤はとても長く遠い道のりだったはずです。しかし自分が変わらなければ状況が変わることはないので、これに気付くまでのレールを敷いて「待って」やるのが、親や教師の役目だと思うのです。

高校の進級/卒業認定のシステム

もう一つここで言いたいこと。それは在籍校の進級規定を知り、なるべく早くから、担任や養護教諭、カウンセラー等の助言は受けておくことです。特に進級/卒業規定は、全国一律ではなく、各校の内規で定められていることが多い、という現実はあまり知られていません。全日制は「全履修全修得=全ての授業に定められた時間以上出席(→履修)し、かつ単位認定を受ける(→修得)」という形が卒業の基本要件となりますが、実態は追認考査を何度も行って、結局は単位修得を認めて卒業させる学校が多いと想像します(もちろん全てがそうではありませんが…)。また全日制高校でも○単位以内の未修得なら進級/卒業認定する、という高校もありますし、定時制や通信制高校では、卒業認定は74単位以上の修得と定められています(全日制で全修得の場合は標準90単位)。また「特別な事情」を認められた場合、履修基準を緩和する内規を持つ学校もあります。多くは不慮の事故等による留年をなるべく回避することを想定した内規ですが、これをどこまで「特別な事情」と考えるかは、各校の判断によります。つまり同じ高卒資格でも学校によってその認定基準に差がある、というのが現実なのです。

以下、私の過去記事も参考にしてください。

最近の不登校生徒は、新しい環境を求めて通信制高校に転学するケースが比較的多かったように思います。これは前任校で修得した単位をそのまま転学先の卒業認定に使えるからです。またこれと似た制度で高等学校卒業程度認定試験というのもあって、これは高卒資格ではありませんが、その先の大学や専門学校の受験資格が得られる、という試験です。この試験もこれまでの修得単位を合算して認定可能なシステムなので、参考までに申し添えます。

またこれは私がクラス担任として経験した極端な事例ですが、高校3年生で74単位以上修得しているのに全日制での卒業が認定されない生徒で、しかも進路先が決まり既に学費も払い込んでいるため、留年を避けたい事情もありました。私もさすがに困りましたが、とある通信制高校のシステムを上手く活用し、合法的に解決*できたことがあります。ここにそのシステムを詳しく書くことはできませんが、同じ通信制でも、ここ数年で本当にたくさんの学校が新設され、それだけに実態は多種多様なのです。スクーリングと言って、決められた時間の登校を義務づける学校もあるし、全くそれを要しない学校もあります。大学のように集中講義的なカリキュラムを設けている学校もあります。さらにそんな生徒の課題提出を補佐する「サポート校」と呼ばれる私塾とセットにして転学するケースもあるので、転学を考える場合は、学校の教育方針や学費、特徴をよく調べた上で、自分に合った学校選びができるようしっかりと調べてほしいと思います。

*お問い合わせフォームまたは自己紹介欄のTwitterからDMをいただければ、この合法的な方法をお教えしますね)

本記事は、過去の拙著より引用し、加筆修正を加えたものです。

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